人材不足で激務に悩んでいる看護師へ
看護師の離職率の高さが大きな問題となっていますが、離職率が高くなる背景には病院の規模や夜勤時間数などがあります。
2017年に日本看護協会が発表した「2016年病院看護実態調査」によると2015年度の常勤看護師の離職率は10.9%でしたが、ここ5年ほどの数値とさほど変わっていないため、離職率はほぼ横ばいであることが推測できます。
また、新人看護師だけの離職率をみてみると、新人看護師の離職率は7.8%と平均よりも低い数値でした。この数値が出された背景には新人看護師の教育や研修制度が充実したことが大きく関係しています。2010年に保助看法や看護師等の人材確保の促進に関する法律が改正され、新人看護師の卒後研修が努力義務化されました。これは看護の質の向上や医療安全の確保、早期離職防止を目的とした研修で、各病院で実施することを義務付けたものですが、こうした取り組みが新人看護師の離職防止に効果があったのでは?と推察されています。しかし、すべての病院で効果が出たわけではありません。むしろ個人病院などの小規模な病院や大都市の病院では離職率が高い、という結果も出ています。離職率の平均は10.9%でしたが、個人病院の離職率は常勤看護師が17.3%、新人看護師が17.6%と平均以上の数値が出ています。また、東京や神奈川、大阪などの大都市でも14.4%、13.9%、13.1%と高い数値を出しています。
病院で働く看護師にとって夜勤はつきものです。夜勤といっても二交代制や三交代制などさまざまな勤務スタイルがありますが、その中でも多いのが二交代制で、62.0%と全体の6割を占め月に72時間以上夜勤勤務に従事している看護師は34.8%にものぼります。看護師一人あたりの月間夜勤時間数を2012年と比較してみると、夜勤が64時間以下は減少しているものの、64~72時間・72~80時間はほぼ横ばいで、80~96時間・96時間以上にいたってはむしろ増加していることが分かりました。
夜勤時間数が月72時間以上の看護師が10%にも満たないような病院は離職率が9.1%でしたが、50%以上の病院では11.9%と夜勤時間数が月72時間以上を超える看護師の多い職場ほど離職率が高くなっています。
看護師不足を少しでも解消するために日勤の常勤制度を導入する病院もありますが、そうすると夜勤と日勤の両方に従事することができる看護師に大きな負担がかかってしまい負担が大きくなるにもかかわらず、夜勤の追加支給などの対策を行っている病院はわずか40.2%と半数にも届いていません。過酷な勤務状況に見合わない給料では辞めていく看護師が多いのもうなずけます。